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「危ない原発」チェックリスト〈全国48基〉 活断層、火山、津波…

 丸川珠代環境相原子力防災担当相は、熊本地震発生早々に、国内で唯一運転中の川内原発の「安全宣言」を出した。小誌が先週号で報じた「原発は素人同然」にはおかんむりのようで、「私は野党時代、原発に関して国会質問に立ったから、結構詳しいのに」と周囲にこぼしているとか。
 丸川氏の言う「安全」は本当なのか。小誌は各原発が抱えるリスクを検証した。

 二〇一一年の福島第一原発事故が起きた時、国内では五十四基の原発があったが、事故を受け、福島第一の六基はすべて廃炉となった。それ以外の四十八基について、公開資料や専門家の意見を参考に、抱えるリスクを「大」「中」「小」でランク付けしたのが、下のリストだ。

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 一三年九月以降、すべての原発が停止したが、昨年、川内一、二号機が再稼働。一方で、敦賀一号機、美浜一、二号機、島根一号機、伊方一号機、玄海一号機の六基の廃炉が決まっている。
 原発のリスク要因をチェックする上で、まず注目したのが運転年数だ。
 老朽化により、金属疲労、ひび割れなどのトラブルを引き起こすリスクが増す。福島第一でも、運転年数が長い原子炉から、爆発した。
 三・一一を機に、「新規制基準」(一三年七月施行)が導入され、原発の運転は「原則四十年」となった。
「ただし原子力規制委員会が認めれば、一度だけ最長二十年の延長が出来る『例外』があります。高浜一、二号機はすでに四十年を超えていますが、四月二十日、規制委は審査合格を決定。順調にいけば一九年秋にも再稼働する見込みです」(原発担当記者)
 次に自然災害のリスクだ。新基準では、最大規模の自然災害を想定し対策を講じるよう求めており、中でも活断層津波、火山のリスクを重視している。
「特に活断層の有無は電力会社にとって死活問題です。規制委が、原子炉の下に活断層があると認定すれば、廃炉となるからです」(同前)
 多くの地質学者が危険と指摘するのが敦賀原発だ。実際、国の機関が公表している活断層データベースでは、その付近に活断層が密集している。
 規制委の活断層調査団メンバーだった渡辺満久東洋大学教授(変動地形学)が言う。
「二号機建屋の北東約二百五十メートルの所に『浦底断層』が走っています。建屋直下にある断層が、浦底断層と連動する『活断層』の可能性があるのです」
 この断層を巡っては、規制委が活断層と指摘。日本原子力発電が「活断層ではない」と反論しているが、廃炉の可能性が高まっている。一方、敦賀を選挙区とする高木毅復興相が、昨年十二月、「活断層の真上にあることを理由に廃炉とすべきではない」と、規制委に“注文”をつけている。
柏崎刈羽は、北西沖約二十キロに、長さ五十~六十キロの『佐渡海盆東縁断層』があるほか、敷地内にいくつか破砕帯があり、最近活動した可能性が否定できません。浜岡は南海トラフ地震の想定震源域の真上に立地し、敷地をねじまげるような大きな断層があると考えます」(前出・渡辺氏)
 熊本地震の現地調査に入った遠田晋次東北大教授(地震地質学)は、稼働中の川内原発活断層に関してのリスクは小さいと話す。
「日奈久断層帯が数キロ動いたことは現地調査で確認できました。今後、これらが動いて地震が起きた場合、今回のM7・3かそれ以上の地震が起きる可能性があります。ただ、その場合でも、川内原発は断層から四十キロ程度離れており、強くても震度5弱程度。心配はいらないでしょう」
 福島第一原発の記憶に新しい津波女川原発はリスク「大」としたが、同事故時、福島(十四メートル)を超える十七メートルもの津波に襲われながら、被害を免れている。
「原子炉建屋が海抜約十五メートルの高台にあり、浸水にあったものの、原子炉を冷やすための非常用電源は正常に稼働したのです。再稼働の申請では、約二十三メートルの津波を想定し、海抜二十九メートルの防潮堤を建設中です」(前出・原発担当記者)
 事故の教訓から、各原発とも津波リスクへの対策は進んでいるようだ。
 津波研究の第一人者である今村文彦東北大災害科学国際研究所所長が語る。
「大きな津波を起こすのは東日本大震災のようなプレートが沈み込んで跳ね返って発生する地震です。南海トラフ地震が想定される浜岡原発宍道断層のある島根原発は、最大クラスを検討する必要があります。地震以外に火山性津波もあり、川内原発は多少リスクを考えた方がよいでしょう」
 その川内の火山リスクは「大」。姶良カルデラなど五つのカルデラ(陥没地形)に囲まれており、火山学者は「火砕流被災リスクが国内の原発で最も高い」と口をそろえる。
 小山眞人静岡大防災総合センター教授(火山学)が解説する。
原発の審査は火山学者がほぼ不在の状況で議論が進められており、火山リスクは活断層リスクに比べてあいまいな基準となっていることが問題です。七千三百年前に鬼界カルデラが噴火したことを考えると、近い将来、大規模噴火が起きても不思議ではない。他に大規模噴火のリスクがあるのは、泊、東通、伊方、玄海。過去十二、三万年の間に、大規模火砕流が泊は一度、東通は二度届いていることが確実です。伊方、玄海には阿蘇カルデラの大規模火砕流が届いた可能性があります」
 伊方三号機は今年七月にも再稼働が見込まれ、玄海三、四号機の審査は大詰めを迎えている。

吉田所長も懸念した集中立地

 これら再稼働間近の原発はすべてPWR(加圧水型原子炉)だ。規制委はBWR(沸騰水型原子炉)をリスクと考えているフシがあり、BWRには「フィルター付きベント設備」の即時設置を義務付けている。
 規制委が目をつぶっているリスクもある。「集中立地」の問題だ。福島第一の事故で陣頭指揮を執った吉田昌郎所長(当時)は「吉田調書」でこう述べている。
〈昔から集中立地は嫌いなんです〉
〈(新潟県中越沖地震の)柏崎(刈羽原発)もそうですけれども、大混乱になりました〉
「規制委の田中俊一委員長自身、一二年の会見で『一カ所に三基以下に抑えた方がいい』『一つで大きな事故を起こしてしまうと、隣の方も対策が困難になる』と明言していたが、新基準では原子炉の数の規制は盛り込まれなかった。四基以上の原子炉が並ぶのは、全国で五原発にも及びます」(前出・原発担当記者)
 さらに気になるのが、「免震重要棟」新設が、相次いで中止になっている点だ。地震の揺れを大幅に緩和する同棟は、原発事故時に前出の吉田所長が指揮の拠点としたことで、多くの電力会社が建設を表明してきた。
 川内原発は免震重要棟を『緊急時対策所』とするとして規制委の審査をパスしたものの、再稼働されるや、取りやめると表明。四月二十一日の規制委会合では、東通、女川も免震重要棟の建設計画を取り下げた。宮野廣法政大大学院客員教授原子力工学)が指摘する。
「電力会社は免震の建設のノウハウが乏しいため、技術的な蓄積のある耐震構造に戻したのでしょう。再稼働の申請をする際に拙速な計画を立てていなかったか検証し、なぜ計画を変更したのか周辺住民や自治体へ丁寧な説明をすべきです」
 規制委の田中委員長も「大きなリスクを持っている技術」(今年三月の会見)と認めている原発。何より国民からの信頼回復が不可欠だ。各原発には、納得が得られるようなリスク対策が求められている。

週刊文春」2016年5月5日/12日 ゴールデンウィーク特大号