読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

〈小泉純一郎〉激白「川内原発は止めて九州は即時原発ゼロに」

「騙された私がアホやねん」
 熊本地震の三日前、ライフワークとする「原発ゼロ社会の実現」を訴え、宮城県の講演でこう語っていた小泉純一郎元首相(74)地震発生を受けて、『小泉純一郎独白』の著者・常井健一氏に吠えた。

 四月十一日、東北電力女川原発を抱える宮城県に小泉氏の姿があった。盟友の中川秀直官房長官らを同行させ、登米市太陽光発電所を見学後、仙台市内で講演。会場を埋め尽くす聴衆に「原発ゼロでも日本はやっていける」と熱弁する一方、首相時代に原発を推進した過去にも触れ、「専門家にウソをつかれた」と言わんばかりに冒頭のフレーズで笑いに変える。桂銀淑「大阪慕色」の一節を用いたお得意の演出だ。
 この日、小泉氏はレクサスからトヨタ燃料電池車「ミライ」に乗り換えたという“新ネタ”を披露、「過去の人が未来に乗っているんだ!」とおどけて見せた。
 首相退任から今秋で十年。その人気はいまだ健在だ。
「講演の告知を地元紙に出した日、事務局の電話やファックスが鳴りやまず、八百席が予約で埋まってしまいました」(事務局関係者)
 政界引退後は「読書、音楽、ゴルフ。退屈しないね」と語る小泉氏は、三月にはイタリア経済紙のサイトにも登場した。東京文化会館で巨匠リッカルド・ムーティー指揮のオペラ楽曲を堪能した直後、特派員に直撃され、お得意のオペラ論を饒舌に語ったのだ。
「オペラが好きになったのは二十歳ごろ。イタリアから入ったんだ。素晴らしいよ。ヴェルディドニゼッティベッリーニプッチーニはわかりやすい。ワーグナーはね、なかなか難しい。ワーグナーを好きになったのは、四十過ぎ。ある程度、聞きこまないとわかるようにならない」
 後日、そのことを筆者が訊ねると嬉しそうに語った。
ムーティーは四十年間で百五十回も来日しているんだ。一年に四回弱も来ている。あれだけ日本を知る指揮者は他にいないよ」
 最近は、クラシック関連のオファーも受ける。四月三十日には宮崎市で開かれる宮崎国際音楽祭でも演奏者と持論を語る予定だ。
「徳永二男さんという有名なヴァイオリニストと一緒に話すんだ。その日は原発の話はしないよ」(小泉氏)
 一方、今回の熊本地震を受け、小泉氏周辺は川内原発の稼働停止を訴える。小泉氏は筆者にこう強調する。
「熊本の震災は想定外だった。五年前、福島第一原発の事故を引き起こした大地震も想定外だった。万が一のことを考え、川内原発は当然稼働を止め、九州の原発を即時ゼロにすべきだ」
 小泉氏は以前から鹿児島県にある川内原発の再稼働に警鐘を鳴らしていた。原子炉は、父・純也氏の故郷・南さつま市から五十キロの距離にある。小泉氏は昨年六月に鹿児島市を訪れ、講演でこう訴えた。
地震だって最近しょっちゅう起きるし、噴火だってね、想定外の噴火でしょう、御嶽山の噴火にしても、他の噴火にしても。桜島よりも、口永良部島の噴火のほうが大きい。九州には阿蘇もあるし、桜島もある。この十年間で、マグニチュード七前後の地震が五回も起きているんです。そのたびに原発がストップしている。地震国・日本、火山もいつ噴火するのかわからない。日本は、原発をやってはいけない国ですよ」
 安全性を審査する原子力規制委員会の新基準も、冒頭の講演で一刀両断した。
「最近、専門家も『世界一厳しい基準』と言うのを控え、『世界最高水準に近いレベル』と言う。急に否定するのは嫌だから、だんだんそう言い換えている」
 息子・進次郎氏は最近、以前よりも原発関連の発言を控えているが、「各党は原発参院選の争点にすべき」と訴える父は五月下旬、都内で集会を開き、闘いの狼煙(のろし)を上げようとしている。
 元首相の怪気炎はまだまだ収まりそうにない。

週刊文春」2016年5月5日/12日 ゴールデンウィーク特大号