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「不倫」はやっぱり文化だ! 〈林真理子×柴門ふみ〉

時まさに不倫元年。年始からの報道ラッシュもさることながら、当事者に対する世間のバッシングはまた前代未聞の厳しさだ。しかし『源氏物語』を繙くまでもなく、“禁断の愛”は日本文化の原点ではなかったか? 世の風潮に違和感を覚える二人の作家がついに立ちあがった!

 今年に入ってから、ベッキー、宮崎謙介元議員、桂文枝さん、乙武洋匡君……と不倫がバレて、ものすごく批判されていますね。センテンススプリングが火をつけてしまった「不倫は許すまじ」という世の中の空気は何とかしてほしい。
柴門 私もいまの不倫叩きは、ちょっと違うと思っています。よくよく考えてみると、不倫で怒る権利があるのは、浮気された奥さんだけですよね。
 そうですよ。不倫がバレて、記者会見で「世間をお騒がせして、すみません」ってよく言うけど、謝る必要なんて全然ない。みんな、スキャンダルを楽しんでいるだけだもん。
柴門 世間は害を被ったわけじゃないし、むしろ話題を提供してくれてありがとうという感じでしょう。ベッキーちゃんは、元気で天真爛漫なところが売りのタレントだったから、かわいそうだなと思って。
 かわいそうですよ。いまベッキーみたいな若い女の子たちは、普通の恋愛ってそんなに楽しくないんじゃないかな。だけど、妻のある男の人とこっそりつき合うのはドラマチックでスリリング。ベッキーは、まだ彼と結ばれる日を夢見ているかもしれないよ。
柴門 ベッキーちゃんは「ゲスの極み乙女。」のファンだったんでしょ。
 ファンでライブの打ち上げに行って口説かれたら好きになっちゃうよね。
柴門 しょうがないよ。打ち上げの夜ってアドレナリンが出て高揚してるし、最初は奥さんがいるって知らなかったみたいだし……。
 乙武君もすごく糾弾されましたが、あれは男性の嫉妬も大きい。モテない男のひがみ。
 本当だよね。私のまわりでも女の人はみんな「いいじゃん」って言ってる。
柴門 桂文枝さんの場合は、七十過ぎてもまだ愛人を持てることが、世の男性はうらやましいんですよ。
 まあ、文枝さんには、もう少し相手を選んでほしいと言いたいですけど。
柴門 これまで芸人さんって、自分の浮気でもネタにして笑いをとるのが当たり前だったと思うんだけど、ここ数年で潮目が変わってきたような気がしてて。
 私もそう思う。
柴門 とにかく明るい安村さんだって結構うろたえていたし、文枝さんほどの大御所でも、笑い飛ばすことができなかった。芸人さんでさえ笑いにできない風潮になってきてるのは、ちょっとどうなんでしょう。
 ビートたけしさんはどうなの? 愛人と暮らしていると週刊誌でも書かれているけど、もう老人枠だからいいのかしら。
柴門 老人枠(笑)。いま何をやっても許されるのは、たけしさんぐらいじゃない? ダウンタウンの浜ちゃん(浜田雅功)だって、奥さん(小川菜摘)が怖いみたいで低姿勢だし。
 私、お笑い芸人の不倫記者会見でものすごく印象に残っているのが、宮川大助・花子の花子さんが若手芸人と不倫したとき。
 それ、私も覚えてる。
柴門 夫婦で記者会見して、大助が「おまえほんまにやったんか」って言って、「やったやった、アッハッハッ」って。見ていて、すごいなあと思ったんですよ。
 そうだね。最近はなんでこんなに不倫に対して厳しくなってきたんだろう。
柴門 ネットだと思います。いまは何かあると、ネットであっという間に炎上しちゃう。ネットに叩かれて謝らなきゃいけない状況に追い込まれたり、過敏に反応するとまた叩かれたり。
 ネットなんか無視すればいいのに。
柴門 林さんのように強い人ばかりではないですよ。
 そうか、芸能人は人気商売だし、大変だよね。
柴門 あと、政治家も不倫はまずいわけでしょう。
 政治家だって昔はすごかったよ。いまブームになっている田中角栄さんなんか、複数の愛人がいて、それぞれに子どもを産ませていたんですから。
柴門 公然と愛人を秘書にしていましたものね。
 ハラケンの愛称で知られる原健三郎という政治家は、選挙のときに奥さんもお妾さんも土下座させて、「偉い!」と評判になって票が入ったって。
柴門 時代や生まれ育った環境もありますよ。私は生まれが徳島で、昔はまだ近所にお妾さんと呼ばれる人がいました。昭和の時代はまだお妾さんというものは、そんな悪いことじゃないみたいという下地がありましたね。

「道ならぬ恋」に惹かれる心

 そうそう。日本はもともと浮気についておおらかだったでしょう。『源氏物語』が書かれた平安時代の頃は、正妻以外にも女性は何人も持てましたよね。
柴門 でも、一夫多妻が認められていても、六条御息所は嫉妬のあまり生霊になってしまいましたよね。そういう意味では現在の一夫一妻制は、とりあえず正妻が一番偉くて、残りは全部ルール違反という決まりで、すごくわかりやすい。
 そうね。フェミニストの中には、明治に入ってから出来た戸籍制度が女性を縛っているんだって言う人もいるけど、婚姻制度がなかったら、男女はグチャグチャになっちゃう。
柴門 うん。そのひとつの典型が『美は乱調にあり』(瀬戸内寂聴原作)で描いた、大杉栄と三人の女だと思う。アナーキスト大杉栄は、男も女も経済的に自立して自由にセックスする「フリーラブ」という男女のありかたを提唱して、大杉栄伊藤野枝、神近市子、妻の保子という一対三のフリーラブを始めるわけですよ。ところがうまくいくはずはなくて、大杉は経済的には神近に頼りきりになり、女性としては最初から伊藤野枝が大好きで、妻とはやむなく離婚できずにいただけ。四人の関係はあっという間に破たんして、大杉栄は神近市子に刺されちゃうわけです。平塚らいてうが「誰かを傷つけるようなこの恋愛がこの先うまくいくとはとても思いませんでした」と書いてますけどね。

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フリーラブを描いた『美は乱調にあり』

 そうだよね。大正の頃までは、軽井沢の別荘で首を吊った有島武郎と波多野秋子みたいに、不倫がもつれて心中に発展することもよくあったみたい。
柴門 いま不倫して死ぬ人はまずいませんよね。そうすると、やっぱり昔のほうが厳しかったのかな。
 それは姦通罪があったから。北原白秋は不倫相手の夫から告訴されて投獄されたからね。人妻と不倫して相手の夫にバレたら、男は牢屋に入るか死ぬかの二つしか選択肢がなかった。
柴門 そうよね。戦前は命がけだったんですね。
 でも、道ならぬ恋とわかっていながらどうしようもなく惹かれてしまう心や、そこに生まれる美学とか甘美な喜びというのは間違いなくある。そうしたものを書くのが小説であり、作家なんだと思うし、だからこそ『源氏物語』以降、多くの名作が生まれているわけでしょう。不倫がなければ、小説は書けません。柴門さんには不倫をテーマにした作品はありますか。
柴門 『Age,35』や『同窓生』ですね。『あすなろ白書』は、ヒロインが上司と不倫します。
 私たちはそういう人の気持ちの理解者だよね。
柴門 もちろん。作家ですから、気持ちはわかります。遊びたい男の気持ちも、怒る妻の気持ちも。そこに寄り添って人間を描くのが商売みたいなものだから。
 昔、渡辺淳一先生が「人はもっと不倫すべきだ」っておっしゃっていました。不倫すれば男も女も活力が出てくるし、経済効果もすごい。食事したり、プレゼントしたりで何十億円にもなるはずだ、と。半分冗談でお書きになったと思うんですけど、柳美里さんが「不倫で苦しむ人もいるんだ」って反論していた。
柴門 たしかにこれまで、傷ついた奥さんの側の気持ちにあまりスポットライトが当たってこなかったかもしれない。一昨年、七十代の妻が、介護をしている夫から「若いころの不倫は楽しかった」と言われて、夫を殴り殺した事件がありましたよ。
 ダンナの浮気を笑って許してる奥さんは偉いという風潮があるけれど……。

女の不倫は欲、男の不倫は見栄

柴門 でも、本心から笑って許している妻なんて、実はひとりもいないですよ。オモテでは物わかりのいいことを言っている奥さんでも、よく話を聞いてみたら、夫には怒っているし、愛人と対決した過去を明かしてくれた人がいました。男はよく「なんでそんな古いことを持ち出すんだ」と言うけど、女は自分が痛い目に遭った経験を瞬間冷凍できちゃうんです。ある時ふとした瞬間に電子レンジで解凍して、まるでこの間のことのようにリアルに鮮明に思い出すことができる。
 私もそうだよ。夫にされた嫌なことなんて、つい昨日のことのように(笑)。
柴門 なぜ奥さんが不倫に対して怒るかというと、夫は百パーセントの愛情と金と時間を私に分け与えるべきなのに、よその女にそれを使ったからなんだって。『大人恋愛塾』に書いた話なんですけど、ある出版社の男性は浮気がバレて、妻に半年のあいだ毎晩「あの女と何回、どんな体位でやったの?」と責められ続けたんですって。妻からすれば、それは自分がもらって当然の権利だったから。
 奥さんってさ、自分がなにか後ろめたいことをしていても、絶対にダンナのことを許さないよね。
柴門 やっぱり女は欲張りなんです(笑)。女の不倫は欲、男の不倫は見栄のためですよね。男は自分がまだモテることを確認したくて浮気する。
 なるほど。柴門さんに聞きたいんですけど、上戸彩ちゃんが出ていたドラマ『昼顔』がすごく流行ったでしょう。奥さんたちは不倫のドラマに胸をときめかせてるのに、他人がすると怒るわけ。世間の奥さんたちは本当に不倫している人に怒っているのかな?
柴門 不倫をしてない奥さんは怒るんじゃない?
 『昼顔』をうっとり眺めたり、疑似恋愛している自分はいいけれど、実際にやってる他人には腹が立つということですか。
柴門 週刊誌の不倫報道を見ると、奥さんはまず妻に感情移入しちゃって、いつの間にか不倫してる男が自分のダンナとかぶってきちゃうんだと思いますよ。
 なるほど。
柴門 でも、そういう奥さんたちに限って、林さんの『不機嫌な果実』を読むとヒロインになりきって、「不倫の何が悪いの?」と思うような気もしますよね。

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不倫を描いた『不機嫌な果実』は発表時、社会現象に。
栗山千明市原隼人主演で連ドラに テレ朝系「金曜ナ
イトドラマ」4月29日スタート

 そうだといいけど。私もそう思いながら書いてますから。「不倫の何が悪いの?」って。
 これは設定変えて短編小説にしたことがあるんですけど、昔、女性の読者からお手紙が来たんです。「林さんの本を読んでいますが、実際にはこの世に不倫なんかないと思っていた。だけど、本当にあるんですね」って。彼女が同窓会へ行ったら、チビで勉強もそこそこだった男子がお医者さんになっていてビックリしたそうです。「彼に私のことをずっと好きだったと言われて、会うようになりました。彼が医者になるなら中学の頃にフラなければよかった。うちの夫はサラリーマンで、彼は医者でいい給料をもらっているから悔しい。だから、いま不倫して憂さを晴らしています」って。
柴門 それ、本当の話?
 うん。それから半年ぐらい経って来た手紙によれば、彼は難病にかかってしまったらしい。「ああ、不倫でよかった。看病なんかしなくて知らん顔していればいいから、結婚しないでよかったと思いました」。それで手紙が終わっていた。
柴門 すごい話だね。でも、女ってそうだと思う。週刊誌を見て「不倫、許せん」と怒っている主婦でも、いざ自分がそういう関係になったら、不倫をすごく楽しむ気がします。
 楽しいと思うよ。やっぱりおしゃれもするし、表情も生き生きしてくるし。
柴門 人妻でも、五十過ぎるとハードルがすごい低くなります。
 おおっ!
柴門 残された人生を思えば、不倫を一回や二回したって罰は当たらないだろう。夫とはもう十年セックスレスだし、死ぬ前にしてもいいんじゃないか、って。
 そういう時に限って男が来なかったりして(笑)。このお腹は見せられないっていう美意識もあるはず。
柴門 同じくらいお腹が出ているおじさんならいいかも(笑)。でも、妄想してるぶんには楽しいけど、不倫は結局、傷つくんですよ。私は『イングリッシュ・ペイシェント』という映画が大好きなんです。壮大な不倫劇なんですけど、中でも好きなシーンがあって、人妻が夫の元に戻ろうとして、恋人の男は彼女をみんなの前で侮辱する。その男が去っていこうとしているところに彼女は追いかけていって、「傷ついたのは自分だけと思わないで」と言う。泣けるシーンなんですよ。不倫はみんな傷つく。林さんのお友達でも、うまく不倫できてる人ってみんなタフな人たちでしょう。
 タフでお金のある人。
柴門 だから、不倫は小説や漫画や映画で楽しむほうがいい。これが結論(笑)。
 そうね。お互い物書きとして読者を感動させる作品を書き続けていこうね。
柴門 はい、頑張ります。

さいもんふみ/1957(昭和32)年徳島県生れ。79年漫画家デビュー。『東京ラブストーリー』『あすなろ白書』『同窓生――人は、三度、恋をする――』『美は乱調にあり』、エッセイ集『大人恋愛塾』『大人のための恋愛ドリル』など。


週刊文春」2016年5月5日/12日 ゴールデンウィーク特大号

「危ない原発」チェックリスト〈全国48基〉 活断層、火山、津波…

 丸川珠代環境相原子力防災担当相は、熊本地震発生早々に、国内で唯一運転中の川内原発の「安全宣言」を出した。小誌が先週号で報じた「原発は素人同然」にはおかんむりのようで、「私は野党時代、原発に関して国会質問に立ったから、結構詳しいのに」と周囲にこぼしているとか。
 丸川氏の言う「安全」は本当なのか。小誌は各原発が抱えるリスクを検証した。

 二〇一一年の福島第一原発事故が起きた時、国内では五十四基の原発があったが、事故を受け、福島第一の六基はすべて廃炉となった。それ以外の四十八基について、公開資料や専門家の意見を参考に、抱えるリスクを「大」「中」「小」でランク付けしたのが、下のリストだ。

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 一三年九月以降、すべての原発が停止したが、昨年、川内一、二号機が再稼働。一方で、敦賀一号機、美浜一、二号機、島根一号機、伊方一号機、玄海一号機の六基の廃炉が決まっている。
 原発のリスク要因をチェックする上で、まず注目したのが運転年数だ。
 老朽化により、金属疲労、ひび割れなどのトラブルを引き起こすリスクが増す。福島第一でも、運転年数が長い原子炉から、爆発した。
 三・一一を機に、「新規制基準」(一三年七月施行)が導入され、原発の運転は「原則四十年」となった。
「ただし原子力規制委員会が認めれば、一度だけ最長二十年の延長が出来る『例外』があります。高浜一、二号機はすでに四十年を超えていますが、四月二十日、規制委は審査合格を決定。順調にいけば一九年秋にも再稼働する見込みです」(原発担当記者)
 次に自然災害のリスクだ。新基準では、最大規模の自然災害を想定し対策を講じるよう求めており、中でも活断層津波、火山のリスクを重視している。
「特に活断層の有無は電力会社にとって死活問題です。規制委が、原子炉の下に活断層があると認定すれば、廃炉となるからです」(同前)
 多くの地質学者が危険と指摘するのが敦賀原発だ。実際、国の機関が公表している活断層データベースでは、その付近に活断層が密集している。
 規制委の活断層調査団メンバーだった渡辺満久東洋大学教授(変動地形学)が言う。
「二号機建屋の北東約二百五十メートルの所に『浦底断層』が走っています。建屋直下にある断層が、浦底断層と連動する『活断層』の可能性があるのです」
 この断層を巡っては、規制委が活断層と指摘。日本原子力発電が「活断層ではない」と反論しているが、廃炉の可能性が高まっている。一方、敦賀を選挙区とする高木毅復興相が、昨年十二月、「活断層の真上にあることを理由に廃炉とすべきではない」と、規制委に“注文”をつけている。
柏崎刈羽は、北西沖約二十キロに、長さ五十~六十キロの『佐渡海盆東縁断層』があるほか、敷地内にいくつか破砕帯があり、最近活動した可能性が否定できません。浜岡は南海トラフ地震の想定震源域の真上に立地し、敷地をねじまげるような大きな断層があると考えます」(前出・渡辺氏)
 熊本地震の現地調査に入った遠田晋次東北大教授(地震地質学)は、稼働中の川内原発活断層に関してのリスクは小さいと話す。
「日奈久断層帯が数キロ動いたことは現地調査で確認できました。今後、これらが動いて地震が起きた場合、今回のM7・3かそれ以上の地震が起きる可能性があります。ただ、その場合でも、川内原発は断層から四十キロ程度離れており、強くても震度5弱程度。心配はいらないでしょう」
 福島第一原発の記憶に新しい津波女川原発はリスク「大」としたが、同事故時、福島(十四メートル)を超える十七メートルもの津波に襲われながら、被害を免れている。
「原子炉建屋が海抜約十五メートルの高台にあり、浸水にあったものの、原子炉を冷やすための非常用電源は正常に稼働したのです。再稼働の申請では、約二十三メートルの津波を想定し、海抜二十九メートルの防潮堤を建設中です」(前出・原発担当記者)
 事故の教訓から、各原発とも津波リスクへの対策は進んでいるようだ。
 津波研究の第一人者である今村文彦東北大災害科学国際研究所所長が語る。
「大きな津波を起こすのは東日本大震災のようなプレートが沈み込んで跳ね返って発生する地震です。南海トラフ地震が想定される浜岡原発宍道断層のある島根原発は、最大クラスを検討する必要があります。地震以外に火山性津波もあり、川内原発は多少リスクを考えた方がよいでしょう」
 その川内の火山リスクは「大」。姶良カルデラなど五つのカルデラ(陥没地形)に囲まれており、火山学者は「火砕流被災リスクが国内の原発で最も高い」と口をそろえる。
 小山眞人静岡大防災総合センター教授(火山学)が解説する。
原発の審査は火山学者がほぼ不在の状況で議論が進められており、火山リスクは活断層リスクに比べてあいまいな基準となっていることが問題です。七千三百年前に鬼界カルデラが噴火したことを考えると、近い将来、大規模噴火が起きても不思議ではない。他に大規模噴火のリスクがあるのは、泊、東通、伊方、玄海。過去十二、三万年の間に、大規模火砕流が泊は一度、東通は二度届いていることが確実です。伊方、玄海には阿蘇カルデラの大規模火砕流が届いた可能性があります」
 伊方三号機は今年七月にも再稼働が見込まれ、玄海三、四号機の審査は大詰めを迎えている。

吉田所長も懸念した集中立地

 これら再稼働間近の原発はすべてPWR(加圧水型原子炉)だ。規制委はBWR(沸騰水型原子炉)をリスクと考えているフシがあり、BWRには「フィルター付きベント設備」の即時設置を義務付けている。
 規制委が目をつぶっているリスクもある。「集中立地」の問題だ。福島第一の事故で陣頭指揮を執った吉田昌郎所長(当時)は「吉田調書」でこう述べている。
〈昔から集中立地は嫌いなんです〉
〈(新潟県中越沖地震の)柏崎(刈羽原発)もそうですけれども、大混乱になりました〉
「規制委の田中俊一委員長自身、一二年の会見で『一カ所に三基以下に抑えた方がいい』『一つで大きな事故を起こしてしまうと、隣の方も対策が困難になる』と明言していたが、新基準では原子炉の数の規制は盛り込まれなかった。四基以上の原子炉が並ぶのは、全国で五原発にも及びます」(前出・原発担当記者)
 さらに気になるのが、「免震重要棟」新設が、相次いで中止になっている点だ。地震の揺れを大幅に緩和する同棟は、原発事故時に前出の吉田所長が指揮の拠点としたことで、多くの電力会社が建設を表明してきた。
 川内原発は免震重要棟を『緊急時対策所』とするとして規制委の審査をパスしたものの、再稼働されるや、取りやめると表明。四月二十一日の規制委会合では、東通、女川も免震重要棟の建設計画を取り下げた。宮野廣法政大大学院客員教授原子力工学)が指摘する。
「電力会社は免震の建設のノウハウが乏しいため、技術的な蓄積のある耐震構造に戻したのでしょう。再稼働の申請をする際に拙速な計画を立てていなかったか検証し、なぜ計画を変更したのか周辺住民や自治体へ丁寧な説明をすべきです」
 規制委の田中委員長も「大きなリスクを持っている技術」(今年三月の会見)と認めている原発。何より国民からの信頼回復が不可欠だ。各原発には、納得が得られるようなリスク対策が求められている。

週刊文春」2016年5月5日/12日 ゴールデンウィーク特大号

参院選「全選挙区」完全予測〈2016〉 衆参ダブルでも「与党3分の2」届かず (政治広報システム研究所代表・久保田正志+本誌取材班)

北海道補選における野党候補の猛追に、官邸は一時、色を失った。そんな矢先に熊本地震が発生。政権与党には追い風となった一方で、相次ぐ失言は、有権者の目には自民党の“驕り”と映る。衆参ダブルはあるのか。最新の選挙予測は、衝撃的な結末を示している。

 七月十日投開票が確実視される第二十四回参院選の“試金石”と目された北海道五区補選。故・町村信孝外相の娘婿、和田義明氏と野党統一候補の池田真紀氏との熾烈な戦いは、和田氏に軍配が上がった。
「四月上旬の世論調査で池田氏にリードされた時、和田氏は『俺は三菱商事を辞めてきたんだぞ』と怒っていました。町村時代からのベテラン秘書が事務所を去り、選対本部もあまり機能していなかった。官邸も強い危機感を抱き、小泉進次郎氏を二度も現地入りさせ、さらに公明党の支持母体、創価学会もフル活動させました」(道政担当記者)
 この時点では、まだ情勢は不透明だったが、風向きが変わったのは「熊本地震」の発生によってだった。
「一般的に危機的な事態が起きると政権与党の支持率は上がります。災害対策本部の会議は、毎回頭撮りがあり、首相自ら成果をアピールしていた。北海道でも政府の震災対応ばかりが報じられていました」(官邸関係者)
 投開票の約一週間前には自民党幹部は勝利を確信していた。
自衛隊員や学会員の期日前投票で、和田氏が大きくリードしていた。二階俊博総務会長も『勝てそうだろ』と余裕を見せていました」(自民党担当記者)
 それで気が緩んだのだろうか。
 四月二十一日夜、東京・自由が丘にある中華料理店。五区補選の投開票を三日後に控え、熊本では行方不明者の捜索が続くなか、自民党の熊本地震対策本部長でもある谷垣禎一幹事長と十人以上の番記者が集まり、谷垣氏の七十一歳の“誕生日会”が開かれていた。
「谷垣氏は三月七日生まれですが、都合がつかず、開催が延び延びになっていました」(政治部デスク)
 一行が陣取った個室には、紹興酒やビール瓶が次々と運ばれていく。真っ赤な顔になった谷垣氏は、番記者を前にこうまくし立てていた。
「補選は横一線。自民党の議員の軽率な言動が影響している。もし負けたら、(「巫女のくせに」発言の)大西英男A級戦犯だ」
 あるいはこんなことも。
「選挙制度改革で東京一極集中になったら、宮崎謙介みたいな、どうしようもないヤツばかりになる」
 批判の矛先は、暴露本を出そうとしたこの人にも向けられた。
「TPPの西川(公也)委員長は強面に見えるが、軽率だ。強面には軽率な人が多いんだ」
 宴会は三時間弱続き、お開きとなった。民放の若い記者から「外には誰もいません」と報告を受けた谷垣氏が悠然と店外に出たところを、小誌は直撃した。
――捜索も続いていますが、なぜこういう会を?
「捜索は続いてます。ただ、キャンセルを続けているのは、大きな店ならともかくこのくらいの店だと気の毒です。経済が自粛して、風評被害だとか、そういうことがあると思います」
 ところが谷垣氏は、再び小誌の名を確認すると「ブンッ、文春とはケンカしたことがある。文春なら(発言を)撤回します」と激高したのだった――。
 弁護士資格を持つ谷垣氏が過去の小誌との裁判を“ケンカ”とは恐れ入るが、「安倍一強」と言われながらも、一方でスキャンダルや失言が相次ぐ「驕る自民党」への批判の声は高まっている。
 北海道五区補選は自民党の勝利に終わったが、果たして、来る参院選はどのような結末を迎えるのか。

野党に“チャンスの順番”到来

 小誌は前回(一月十四日号)に引き続き、政治広報システム研究所の久保田正志代表とともに徹底した情勢分析を行なった。
 まずは参院選の党派別予測(表1)から見ていこう。

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 自民の予測値は現有(改選)から三議席増の五十四議席。非改選と合わせた選挙後の自公の議席数は、百四十三議席にとどまった。ここに改憲勢力の「おおさか維新の会」や「日本のこころを大切にする党」、与党系無所属議員まで加えると百六十二議席となり、安倍首相の悲願である「憲法改正の発議」に必要な三分の二にギリギリ届く。
 だが、自民党が安泰というわけではない。
 久保田氏が解説する。
「五区補選の勝敗をそのまま鵜呑みにすれば、全体のトレンドを見誤ります。池田氏はそもそも、一四年末の衆院選では泡沫候補でした。その彼女が町村氏の地盤でここまで迫ったこと自体、野党共闘が着実に進捗していると見たほうがいい。特に大きいのは、共産党の存在でしょう。彼らはいわばプロの政治集団。五区補選でも陰で党員の動員をかけ、票を上積みしました。民進も改めて共産のパワーを思い知ったはずです」
 野党共闘について、民進党枝野幸男幹事長はこう語る。
安倍政権と戦う勢力が特に一人区で一本化されるのは望ましい。それは期待以上に進んでいます。多くの地域で市民や政党以外が主体となっており、それぞれの政党に対する先入観も克服しやすい状況です」
 民進と共産の幹部同士が結束を深めた夜がある。
 時計の針は、四月七日夜に遡る。永田町の日本料理屋で野党四党の幹事長・書記局長会談が行なわれ、その後、枝野氏の音頭で二次会のカラオケに向かったのだ。「他党との宴席に共産党がいるのは異例だ」(閣僚経験者)という。
 枝野氏が振り返る。
共産党さんには内々に打診しておかないと来にくいですから。(共産党は)『ウチは、世間の皆さんのイメージとは違うんです』ということを仰っているので、それならぜひ、と。山下芳生書記局長(当時)も歌っていましたよ。私は大ファンのAKB48の『チャンスの順番』や、サザンオールスターズの『ピースとハイライト』などを歌いました。カラオケをやると、急速に話がしやすくなりますからね」
 各選挙区の予測一覧(表2)を見ていくと、長らく期待感の乏しかった野党にも“チャンスの順番”が回ってきたことが分かる。

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参院選の帰趨を決めるのは、全国三十二の一人区での勝敗。自民は前回予測より三議席減でしたが、その要因は、山形、福島、長野、岡山の四つの一人区で野党統一候補に逆転を許したことです」(久保田氏)
 福島選挙区では、岩城光英法相が落選の危機に立たされている。国会でTPPの紛争解決(ISDS)条項を問われ、答弁中に右往左往した姿には、安倍首相も頭を抱えていたという。
「二人区時代は毎回野党候補より得票数が少なく、選挙は決して強くない。大臣室で会った時も、『今年の選挙は厳しいね』と漏らしていました。県連主催のパーティーに小泉進次郎氏を呼ぶなど必死の選挙戦が続いています」(福島県議)
 長野選挙区では北澤俊美元防衛相の後継として、民進がTBSの“ニュースの顔”だったキャスターの杉尾秀哉氏を擁立。高い知名度で自民候補を逆転した。
 その杉尾氏が語る。
蓮舫さんから『私、東京から比例に移ってもいいわよ』という話もあった。ただ、東京は決まるのに時間がかかりそうで。長野でも北澤さんが後継を探しているという話もあって、それなら長野で出ます、と。共産党候補が(選挙区から)全国比例に回ってもらうのは有難いこと。“民主党”、連合の一部に共産党アレルギーはありますが、勝つという目的のためには手段は選びません」
 四月二十四日現在、野党候補の一本化は二十六選挙区で実現している。
 だが、全国的に野党共闘の成果が出ているわけではない。枝野氏も「東日本はいい勝負をしているが、西日本は足腰が弱い。正直なかなか伸びてこない」と吐露する。
 そんななか、久保田氏が参院選を占うメルクマールと見るのが、被災地の熊本選挙区だ。
「実は最初に野党統一候補が決まったのが熊本です。政府が震災対応を誤れば、保守地盤の熊本で、野党の逆転もあり得るでしょう。候補の阿部広美氏はシングルマザーから弁護士になった経歴の持ち主。DVや貧困問題を訴えている点は、五区補選の池田氏にも重なります」(久保田氏)
 ある民進党幹部は「野党勢力で一人区の半分(十六議席)」を、参院選の勝敗ラインに掲げている。
「現時点では野党勢力で十二議席の予測ですが、最大で十七議席と勝ち越すことも可能です」(久保田氏)
 一方、最近イライラが止まらないのが、自民党茂木敏充選対委員長だ。圧勝だったはずの北海道五区補選は池田氏に猛追され、東京選挙区の二人目として擁立を決めていた乙武洋匡氏は“五人不倫満足”で出馬断念に追い込まれた。

東京選挙区の二人目は誰か

乙武氏の出馬断念をいち早く報じたフジテレビを『誤報だ』と出禁にしたかと思えば、『党三役が北海道入り』と報じた時事通信を『自分も入れて党四役だ』と出禁に。四月七日号の文春に自身のオフレコ発言(『乙武君も元気だな』など)が報じられたことにも怒っていて、毎週金曜の記者懇も中止になりました」(前出・自民党担当記者)
 安倍首相も「茂木さんにはしっかりやって欲しい」とため息を漏らしているというが、東京選挙区の二人目となる“ポスト乙武”は一体誰なのか。
「組織票を持つ団体はほとんど一人目の中川雅治氏につけているため、二人目に著名人候補を出すという戦略は変わりません。東京五輪に向けて元銀メダリストの有森裕子氏や、保守メディアでの発言も目立つ舞の海秀平氏、さらに、安倍首相と関係が良い渡辺喜美氏らの名前が取り沙汰されています」(自民党関係者)
 有森氏も舞の海氏も事務所担当者を通じて「打診もないし、出馬の意欲もありません」と回答した。
 かたや「八億円献金問題」で前回衆院選で落選した渡辺氏は「八億円はすべて返しました」と国政復帰への意欲を隠さないが、自民との関係は複雑だ。
「比例や東京選挙区とかいろいろオファーは来ています。ただ、(自民栃木県連の会長、茂木氏と)関係が改善したという話は全くない。民進とは考え方が基本的に違うし、民共路線には疑問があります。
(離婚と報じた)文春には(妻を)有名にしていただきましたが、かみさんの手料理を食べて、体重も八十キロから六十八キロまで落としました。センテンススプリング様様ですよ」
 著名人擁立にこだわる茂木氏の戦略には、身内からも批判が飛んでいた。
「SPEEDの今井絵理子氏を比例代表で擁立することを決めた時は、溝手顕正参院議員会長が党の役員会で茂木氏に対し、『参院は芸能プロダクションじゃないぞ』とヤジを飛ばしていました。今井氏と同じ参院比例の片山さつき氏も、ろくに政策を語れない今井氏を『三原じゅん子以下よ』と吐き捨てています」(前出・自民党担当記者)
 沖縄出身の今井氏を擁立した背景には、沖縄選挙区の島尻安伊子沖縄北方担当相を後方支援する意味合いもあった。ところが、茂木氏の目算は外れている。
「選挙区は島尻氏、比例は公明というバーターだったのに、今井氏が公明への比例票を食う可能性が出てきました。公明を刺激したくない自民県連は、今井氏に沖縄入りの自粛を求めています」(地元紙記者)
 今井氏の“後見人”である山東昭子元参院副議長に彼女の近況を尋ねると。
「(沖縄は出禁か?)はい、はい。日本全国広いですから。公明党は島尻さんを支援していただければいい。(今井氏には)私の関係の美容団体や環境団体もあります」
 高い知名度を活かし、今井氏は当選確実と見られるが、結局、島尻氏には未だ公明からの推薦は出ないまま。現職大臣ながら落選の憂き目に遭いそうだ。
 実は、沖縄以外にも、自公間の選挙協力に亀裂が走っている選挙区がある。

メールで古巣に指示を出す橋下氏

 公明は四月二十四日現在、三十二の一人区のうち、二十九選挙区の自民候補者に推薦を出している。推薦が出ていないのは、沖縄の島尻氏、福井の山崎正昭参院議長、徳島・高知の中西祐介氏の三人だ。
「徳島・高知に推薦が出ていないのは、麻生太郎副総理と公明との関係が悪化しているから。これには、神奈川選挙区の事情が影響しています」(自民党幹部)
 どういうことか。自民は神奈川で比例から鞍替えした三原じゅん子氏を公認し、党本部主導で旧みんなの党出身の無所属、中西健治氏にも推薦を出した。
「麻生氏は財政金融委員会での質問を通じて中西健治氏を見出し、出馬会見にも同席。麻生氏自ら県内の経営者に電話をしている。しかし公明も新人の三浦信祐氏を公認しており、『定数四の神奈川で与党系三の当選は厳しい』と反発しています。そこで公明は、麻生派の中西祐介氏への推薦を見送っているのです」(同前)
 一方、神奈川二区選出の菅義偉官房長官は自らのパーティーの壇上にわざわざ三浦氏を招き、支援者に紹介。軽減税率導入を巡る議論以来の、麻生氏との対立がここでも表面化した恰好だ。
 野党共闘の行く末がクローズアップされるなか、橋下徹大阪市長の政界引退で、存在感が薄くなっているのが、おおさか維新だ。
「橋下氏は講演が安定収入源で、ギャラは二百万円だそうです。タレント復帰をかけた羽鳥慎一アナとの新番組については『このまま視聴率が上がらない気がする』とボヤいていました。一方で国会議員には今もメールで『待機児童問題はこうやれ』『あの発言は言い過ぎだ』とか指示を出しています。党勢は衰えるばかりで、我々は橋下氏の復帰を望んでいますが……」(おおさか維新関係者)
 存在感が薄いのは、生活の党の小沢一郎共同代表も同じ。参院選で比例の統一名簿に野党が結集する「オリーブの木」構想を訴え、「少なくとも三回は共産党志位和夫委員長とサシで会っている」(野党担当記者)というが、核となるはずの民進はつれない対応だ。
 枝野氏も取材に「民進党結成だけでもエネルギーを使った。もう一つ別のこと(統一名簿)をやるというのは無理です」と答える。
 六年前は旧民主の目玉候補だった生活の谷亮子副代表。今回改選を迎えるが、
「考え方が自民党に近い谷氏は、小沢氏が山本太郎氏と合流したことに怒っていました。小沢氏も『谷はもう柔道界に返す』と漏らしている。代わりに、かつて不倫スキャンダルが報じられた“ぶってぶって姫”こと姫井由美子氏を比例で擁立するようです」(生活の党関係者)
 姫井氏はこう語る。
「小沢さんからは頑張って欲しいと言われている。比例ということだと思います。谷さんは何事もなければ二期目を目指すのかな。(夫とは離婚していない?)はい、全然変わりません」
 民主の新人だった姫井氏が自民の大物、片山虎之助氏を倒した“姫のトラ退治”から早九年が経つ。この〇七年の参院選で惨敗したことで、第一次安倍政権は崩壊に至ったのだった。
「首相には今もあの参院選のトラウマがある。スキャンダルや失言が相次ぐ状況は、当時と近いものがあります。そこで打って出ようと考えていたのが、野党共闘を分断できる衆参ダブル選でした」(首相側近)

「逆にダブルで決まりじゃないの」

 ところが震災後、急速にダブル回避論が色濃くなっている。震災から六日後の二十日、産経新聞が一面トップで「首相、同日選見送りへ」と報じると、他紙も一斉に追随した。
「解散はサプライズでないと効果が薄い。一連の記事は、ダブルが既定路線という震災前の空気を打ち消すために官邸が書かせたのでしょう。実際、首相は今も本音ではダブルをやりたがっているし、麻生氏も『勝てるならやるべきだ』と漏らしている。二階氏も、政府高官が公明党幹部にダブル見送りを伝えたという報道について、『派閥のヤツらには“政府高官というタヌキには騙されるな。ガセネタを信じるな”と言わないといかん』と言っていました」(前出・政治部デスク)
 枝野氏もダブルはあり得るという見解だ。
「産経の番記者にも『産経が先行して打ったのだから、逆にダブルで決まりじゃないの』と言いました。うちはダブル想定で走っているし、準備は十分出来ています」
 安倍首相は、震災被害の大きさや経済状況を見ながら、五月下旬のサミット後に、最終的な判断を下すものと見られる。では、ダブル選を敢行した場合、衆院議席数はどうなるか。下の表3をご覧いただきたい。

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 自民は現有から十五議席減の二百七十六議席、公明は四議席減の三十一議席。自公で三百七議席となり三分の二(三百十七議席)を割り込む結果になった。
 久保田氏が解説する。
「ダブル自体は与党に有利とはいえ、前回の予測より自民は九議席減らす結果となりました。一方、民進は前回の旧民主と旧維新の合計に比べて、十七議席増の九十九議席。民進の支持率は低いままですが、政権批判の受け皿として、新党結成の効果は少しずつ出ていると言えるでしょう」
 今回、自民で厳しい戦いを強いられているのが、スキャンダルを起こした“二〇一二年組”の二回生議員だ。“ゲス不倫”宮崎謙介前衆院議員の妻、金子恵美氏(新潟四区)、二股交際が報じられた石崎徹氏(新潟一区)、中川郁子氏との不倫キス写真を撮られた門博文氏(和歌山一区)らは軒並み劣勢となった。
 震災の現地対策本部長を僅か五日で更迭された、松本文明内閣府副大臣(東京七区)も劣勢。相手は民進の長妻昭代表代行で、比例復活も厳しいと見られる。
 久保田氏が今後のシナリオをこう予測する。
「確かに、衆院での野党共闘はまだ道半ばです。しかし、五区補選の勢いを見る限り、共産が自主的に候補者を取り下げる選挙区は今後増えてくるでしょう。
 前回の衆院選で、野党が八〇%以上の惜敗率を記録した選挙区は四十一ありました。共産も加わる形の野党共闘が進めば、これらの選挙区では野党勢力が自民から議席を奪い返すことも可能です。その場合、自民は二百五十議席前後まで落ち込むことになる。
 有権者の間で“安倍一強政権”への不満が渦巻きつつあるのは事実。ダブルを打ったからといって、首相の狙い通りの結果になるとは限らないのです」
 これまで側近に「支持率は四割が底」と漏らしてきた安倍首相。だが、野党共闘の展開次第では、五割を超える不支持層が政権崩壊の震源地になり得るのだ。

週刊文春」2016年5月5日/12日 ゴールデンウィーク特大号

〈自衛隊批判〉みのもんた 〈40歳下〉銀座ホステス巡り大暴れ

自衛隊きちんとして欲しいね。あと、過去の震災、阪神淡路、もっと遡れば関東大震災の教訓活かせてないでしょ?〉
 みのもんた(71)が、突如ツイッターを始めたのは四月二十日のことである。二通目にして飛び出した“みの節”により、ネットは大炎上。「何様のつもりだ」「自衛隊はしっかりやっている」と非難の声が殺到した。みのは小誌にも「反省の弁」を述べたが、実はそのウラで、老いらくの恋の挙げ句、銀座のクラブで“大立ち回り”を演じていたことが発覚した。

 最近のみのは、妙に威勢が良い。
 二〇一三年に、次男(当時31)の窃盗未遂容疑による逮捕などの責任をとり、『みのもんたの朝ズバッ!』(TBS)を降板。以来、レギュラー番組はテレビ、ラジオ各一本となっていたが、四月二十三日にテレビ朝日インターネットテレビ局「AbemaTV」で「みのもんたのよるバズ!」がスタート。二年半ぶりに報道キャスター復帰を果たすと、「ツイッターはやめたいが、番組は炎上させたい」と怪気炎を上げた。
 それに先立ち出演した「橋下×羽鳥の新番組(仮)」(テレビ朝日)では、
「今の週刊誌の世界を見ていると真偽が分からない記事が多すぎる。家族とはいえ三十歳を過ぎ、社会人になって家族まである息子の不祥事なのに、当事者ではなく身内を叩きすぎでは」
 と、次男逮捕当時のバッシングについて猛抗議。
 さらには、写真週刊誌「FRIDAY」四月八日発売号が、「管理栄養士をめざす二十代女性との高級ブティックでのデート現場」を掲載。靖子夫人を二〇一二年に喪って以来、やもめ暮らしのみのは、同誌の取材に「婚活中」だと宣言したのである。

三月は週五回、二十回同伴

 だが、
「FRIDAYに撮られた女性はダミーですよ。大本命が別にいる」
 と断言するのは、銀座の高級クラブ「L」の関係者である。
「L」は元・有名横綱やジャニーズタレントが通うことでも知られる有名店だ。
「実は、みのさんは最近ずっと店に入り浸っているんです。お目当ては二十代後半の清楚系ショートカット美女のA子。三月中は週五回、計二十回は同伴した。今や“恋人”と言ってもいいかもしれない」(同前)
 夜の街での遊び方も一変したのだという。
「以前のみのさんは、シャンパンを頼んでは三十分~一時間で退店し、清原和博も行きつけにしていた『V』や『M』などの有名高級クラブを“檀家まわり”するのが通例でした。
 ホステスを何人も付けて、短時間で一気飲みをさせては、酔い潰れるのをゲラゲラ笑いながら観察していた。
 ところが、A子と出会って以降は『L』ばかり。『A子以外は付けないでくれる?』と言って、閉店までいることもある」(同前)
 四月のある日、みのに「L」で居合わせた客がその様子を明かす。
「みのさんは人目に付きづらいカウンターの一番奥の席に座り、A子と顔を突き合わせて、ブランデーのクラッシュアイス割りのようなものを飲んでいました。
 夜十時というのに泥酔状態で、両目なんてわずか二~三ミリしか開いておらず、まるで狸の置物のようだった。A子はみのさんの顔を心配そうに覗いたりして、甲斐甲斐しい様子で“介護”していましたね」
 御年七十一のみのを虜にした“銀座の夜蝶”とは何者なのか。常連客のひとりが匿名で打ち明ける。
「彼女は地方出身で、医療系の私立学校でリハビリを学んだ後、上京。東京都内の高齢者専門施設で働いていたと聞いています。銀座デビューしたのは、つい数カ月前。その後、みのに『ショートヘア版のチェ・ジウ、いいねぇ』と見初められたといいます。店では『みのの本命』として知られている。口さがないホステスからは、『経験の浅い彼女が太い客を捕まえたからって偉そうに』とやっかみの声も囁かれています」
 だが、それは老いらくの恋の“美談”ではなかった。男と女の欲望が渦巻く銀座を舞台に、みのが大立ち回りを演じたのは三月のことである。
「あの日、みのさんはいつもどおりA子を指名していました。そこに旧知の仲である、銀座で老舗の画廊を経営するオーナーの子息である若社長が登場し、A子を自分の席につかせたんです。それに対して、みのは『なんでA子を持って行くんだ。勝手に何をやっているんだ』と赤ら顔で怒り狂い、若社長を小突いた。挙句、仲介に入った『L』の社長にも食って掛かったのです。

被害者は老舗画廊の若社長

 ママの一人は、『あの態度は何なのよ』と、みのに呆れ返っていました」(同前)
 その夜、いったい何が起こったのか。被害者である若社長は、小誌の取材にこう答えた。
「『L』には行ったことはあります。銀座にあるお店で、みのさんにお会いしてご挨拶をしたこともあります。ただ、おっしゃられているようなことは、皆目見当がつかないですね」
 寵愛の末にトラブルに巻き込まれたA子さんも、火消しに努める。
――みのさんがA子さんに首っ丈だと聞きました。
「ないと思います。向こうは遊びで。(食事に行ったりは)もちろん、仕事ですからね」
――A子さんを巡って、画廊の若社長とみのさんがトラブルになったと?
「私にはちょっと心当たりないです。(若社長の席についたかどうかも)ちょっと記憶にないです」
 みの自身はこう釈明する。
「回数は覚えていませんが、空いている時は(A子を)同伴しています。(若社長とは)大変長いお付き合いをさせていただいています。(トラブルは)まったく身に覚えはありません」
 前出の常連客は反駁する。
「若社長の担当だったチーママクラスのホステスは、自分の客が小突かれたことに怒り心頭で、周囲の常連客に『みのさん、どうにかならないのか』と相談して回っていましたよ。みのさんが“招かれざる客”になっているのは確かです」
 報道キャスター復帰前日、自衛隊批判ツイート問題で取材をした小誌記者に、みのはこう語っていた。
「僕、初めてのツイッターなのよ。携帯で薬指と人差し指を使って打ってみたんだけどね。僕は自衛隊に期待してるし、『きちんとしてほしい』というのは一生懸命やってほしいという激励の言葉。週刊文春を通じて謝っておいてよ」
 反省の言葉を述べながら、最後はみの節で笑い飛ばす。
「叩かれた時は飲むしかないでしょ? いま婚活中だから。ブワハハハ。銀座はね、心のふるさとだから」
 キャスター復帰前夜のこの日、みのを乗せたセンチュリーが向かった先は、やはりA子さんの待つ「L」。男性従業員二~三人に抱えられ、店を後にしたのは閉店時間を過ぎた十二時半過ぎのことだった――。
 この男、報道キャスターにはやっぱり不適格では?

週刊文春」2016年5月5日/12日 ゴールデンウィーク特大号

SMAP“9月危機” メリー副社長vs.中居正広〈“キスマイ粛清”で中居、飯島元マネを直撃!〉

異様な公開謝罪で鎮圧されたSMAPの造反。だが中居は納得していなかった。飯島氏の後任への引き継ぎは遅れ、SMAPの25周年企画は宙に浮いたまま。中居が手掛けたキスマイのCD発売も目途が立っていないなか、九月の契約更新を前に火種は燻り続けて……。

 三月下旬のとある夜。東京・六本木でテレビ局関係者らしき男性と、うどん屋から出てきたSMAP中居正広(43)は、雑踏の中で呼び止めるのを躊躇(ためら)っていた小誌記者を目敏く見つけ、怪訝な表情を浮かべつつ自ら歩み寄ってきた。記者の顔を覗き込む中居。こちらが「週刊文春です」と名乗ると一転、笑みを浮かべてこう話し出した。
「俺の嗅覚もすごいね(笑)。何が聞きたいの?」
――今後もSMAPの活動を続けるんですか。
「はははっ(笑)」
――(ジャニーズ事務所との契約が満了する)九月はどうされるのか。

キムタクとの不仲は深刻

「俺、なんも知らないもん。だって。なーんも知らないよ」
 まるで他人事のような口ぶりだが、中居の言葉に偽りはないだろう。
 瞬間最高視聴率が三七%を超えた「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)での謝罪会見から約三カ月。メンバー五人が揃って謝罪したことで、日本中に波紋を広げたSMAPの解散騒動は終息し、元の鞘に収まったはずだった。
 だが、その後もメンバー間に生じた不和は解消されることはなく、それどころかますます亀裂は深まっている。特に、“独立派”の急先鋒に立った中居のジャニーズ事務所内での立場は危うい。
「騒動後、メリー副社長とは直接話をできない状態だったと言います。中居は事務所のスタッフともほとんど連絡を取らず、自分の目先のスケジュールさえ把握していない。三月、NHKの歌番組の司会をやることもラジオのリスナーに指摘されてはじめて知ったほどでした」(芸能関係者)
 四月二十四日、中居はプライベートの時間を利用して熊本地震被災地を訪れ、炊き出しを行った。だが、各テレビ局がこの“美談”を取り上げようとしたところ、なぜかジャニーズ事務所からNGが出たという。
 独立に反対し、事務所に残留することを決めた木村拓哉(43)との不仲も深刻だ。
「唯一、メンバーが全員集って仕事をするのが『スマスマ』ですが、いまだスタジオ観覧の客を入れることができません。フジの亀山千広社長は九月に『スマスマ』が打ち切られる可能性を否定しましたが、正直、現場はかなりぎくしゃくして、スタッフも気疲れしている」(フジ関係者)
 別の日に、小誌は中居が「スマスマ」のチーフプロデューサー・黒木彰一氏と食事をし、二人で中居の自宅マンションに入っていく場面を目撃した。黒木氏は独立騒動でジャニーズ事務所を退社した元マネージメント室長の飯島三智氏(59)と親しく、窓口だったことから業界では“飯島派”のひとりと目されていた人物だ。

ファンクラブ会報が途絶えた

「四月の人事異動に伴い、フジは十二班あったバラエティの制作班を統合。黒木プロデューサーは後輩の別の社員の下に就きました。業界では“飯島派”外しの一環だという噂になっています。局の幹部は『更迭や降格ではない』と言い張っていますが」(同前)
 だが他局でも同様に“飯島派”の局員が異動するケースが目立ち始めている。
「TBSは『金曜日のスマイルたちへ』のCPが経営企画室に異動。NHKも、紅白歌合戦SMAPを司会にしようとした番組部長が金沢支局長に異動しました」(テレビ局関係者)
 いずれも出世や栄転といった形を取っているが、飯島氏と近かったスタッフが次々と現場を離れているのは偶然ではないだろう。
ジャニーズ事務所では近く、メリー副社長の娘である藤島ジュリー景子副社長が社長に就任することが決まっている。テレビ局でもジャニーズの新体制に向けた忖度(そんたく)がさっそくはじまっているということなのです。ジャニーズ内部でも、今後、構造改革がはじまるそうで、その一環で全タレントを統括する制作プロジェクト本部長にジュリー副社長の腹心が抜擢されました。全体的に若返りを図るそうで、これまで副社長を『ジュリーちゃん』と呼んでいたような古参の幹部は肝を冷やしています」(事務所関係者)
 だが、SMAPのすべてを取り仕切っていた飯島氏の退社は、ジャニーズ内に混乱をもたらしている。
ジャニーズ事務所は、もともと“粛々と”がテーマのような会社ですから、社内の空気にさほどの変化はありません。ただ、SMAPに関しては、飯島さんからの引き継ぎが遅れ、業務に支障をきたしているのも事実です」(同前)
 騒動の余波をもろに受けたのはSMAPファンだ。
「以前は年に四回来ていたファンクラブの会報が、去年の十月から半年以上、来ていません。最後の会報には(木村)拓哉がサメに注意しながら海に浸かったことや、炎天下にゴルフを楽しんだことなど夏の思い出が綴られていました。会費の四千円はしっかり取られています」(会員の女性)
 会報もさることながら、新規の入会者には会員証の郵送が遅れる事態も生じているという。

中居は「文春さんは敵!」

 かつては下にも置かない扱いだったSMAPの待遇も悪くなる一方だ。今年はデビュー二十五周年の節目。それでもテレビの記念特番はなく、コンサートやイベントもいまだ開催時期が未定という状態だ。
「五十六枚目のシングルは現段階で制作の予定すらありません。今までSMAPの曲は、レコード会社やアーティストがまず飯島さんにお伺いを立て、彼女の判断と責任のもとで、企画が進行していました。すぐに彼女の代わりができる人はいないし、そもそも今の状況では誰もやりたがらないでしょう。飯島さんは有能なスタッフを個人的な理由で切り、周りにイエスマンばかり置いていたため“チーム飯島”は彼女がいなければまったく機能しないのです」(音楽誌記者)
 中居がプロデューサーを務める、同じくジャニーズの「舞祭組(ブサイク)」のCDアルバムも、昨年九月の段階で発売が告知されながら、三月のリリース予定を過ぎてもいまだ目処がたっていない。
「『舞祭組』はキスマイ(Kis-My-Ft2)の派生ユニットで、飯島さんが退社する前から決裁権はジュリー副社長に移っていました。キスマイではジュリーさんは藤ヶ谷太輔(28)がお気に入りで、飯島さんが推していた玉森裕太(26)はそれほど評価していない。飯島さんと中居さんの色が付いた『舞祭組』に至っては活動を続けることすら危うい」(レコード会社関係者)
 飯島派の面々が冷や飯を食わされる一方で、SMAPの独立を阻止した功労者の木村には、新規の仕事が舞い込んでいる。
「来年一月クールの日曜劇場枠(TBS系)のドラマに主演することが決まっています。プロデューサーは一三年に同じ枠で『安堂ロイド』をヒットさせた植田博樹氏。ジャニーズは『ファンを安心させたい』という理由で、TBSに前倒しで今年十月クールに放送できないかと打診していました。実現はしませんでしたが、事務所はそれほど木村を大事にしているのです」(TBS関係者)
 SMAPジャニーズ事務所の契約は毎年九月末に更新され、その判断は六月に前もって為される。現時点では少なくとも木村が契約を更新することは間違いないようだが、そのとき、中居はどうするのか。
 冒頭の直撃場面で、小誌記者はSMAPが解散する可能性についても尋ねている。だが中居は明確に否定せず、こう言った。
「俺が文春に話すわけないじゃん。だって、文春さんは“敵”でしょう!」
 中居が小誌を敵視する理由は分からないでもない。
 SMAPが解散危機に陥った原因の一端は、昨年一月に小誌が掲載したメリー副社長へのインタビューにあった(一月二十九日号)。
 SMAPを売れない時代から支え続け、事務所のドル箱に育てたあげた飯島氏はジャニーズ事務所内で一角の地位を築いていた。一方で、嵐やTOKIO関ジャニ∞などを担当するジュリー氏とは長年ライバル関係にあった。各テレビ局はジュリー派のタレントを「J1」、飯島派を「J2」と区別し、それぞれのタレントが現場で鉢合わせしないようスケジュールを調整していたことを業界で知らない者はいない。
 だが、単刀直入に記者が派閥について尋ねると、メリー氏は即座に否定し、目の前で飯島氏にこう言った。
「私、何にも(根拠)なしにね、『飯島、こういう噂だから、あんたクビだよ』と言うことはできない。今、ここで(文春から)こういう話を聞いているから、飯島、私はこう言いますよ。『あんた、文春さんがはっきり聞いているんだから、対立するならSMAPを連れていっても今日から出て行ってもらう。あなたは辞めなさい』と言いますよ」
 飯島氏は腸(はらわた)が煮えくりかえる思いだったに違いない。だが、彼女は感情を露にすることはなく、その場はメリー氏に同調し、派閥の存在も否定した。
「飯島氏のメリー氏に対する反発はそれまでにも潜在的にあったわけですが、この一件が、飯島氏が押し出されるように独立に向けて動き出す決定打になったのは間違いありません」(前出・テレビ局関係者)
 飯島氏はメンバーの中でも特に香取慎吾(39)と草なぎ剛(41)の二人を溺愛していたという。

「自殺」を口にした香取

「仕事のつながりを超えてもはや親子のような関係性でした。特に、小学校の頃から宿題の面倒まで見てもらっていた慎吾は飯島さんを実の母親のように慕っていました。最近もドラマの打ち上げの席で『明日どうなるかわかりません。もしかしたら自殺しているかもしれないですね』と不穏な発言をしていたそうですが、いま一番ショックを受けているのは香取かもしれません」(女性誌記者)
 意外なことに、飯島氏と中居の関係はそれほど良好ではなかった。
「中居君は、けっこう飯島さんの意見に反発するんです。飯島さんも彼には遠慮がちなところがあって扱いに困っているようでした。何より、中居が一番好きなのはジャニー喜多川社長ですからね」(芸能関係者)
 中居よりもむしろ木村の方が飯島氏に従順だった。
「ドラマもCMもすべて飯島さんの指示通り。彼女の方針に反抗したことはほとんどない。だからこそ飯島さんは今回の木村の“裏切り”には相当ショックを受けているはずです」(同前)
 木村はなぜ、二十年以上苦楽を共にした糟糠のマネジャーに反旗を翻したのか。ジャニーズ事務所の幹部にさえ木村の真意は分からないという。木村の父が言う。
「もう四十三にもなる男だからね。でも、あれ(SMAP)で食ってる人がたくさんいるわけで、一人の体じゃないんです。“大人の決断”をしたんだと思いますよ」
 草なぎの父にも尋ねたが、言葉少なに「しょうがないんだよ……」と呟くだけだった。
 一方、大荒れだったのは中居だ。「スマスマ」での謝罪会見の二日後、都内の飲食店でテレビ局関係者らと痛飲していた中居が、赤裸々な本音をぶちまけていた様子が「週刊現代」二月十三日号で再現された。
 同誌によると、中居は「なんか、納得いかないんだよね~」「これって犯罪?」と店中に聞こえる声で、謝罪会見への不満をぼやいた。
 さらに「オレだって、その気になったらやっちゃうよ?」と“独立”を示唆するような発言も。返す刀で「ところでさ、メリーって何なの?」「日本人なんだからさあ」と、メリー氏を痛烈に批判した。
「かなり酔っていたのでしょう。中居は『オレにも義理はある』と飯島氏への恩義も打ち明けていた。木村を非難して『あいつのやり方は、どうしても納得いかないんだよ』とも話していたそうです」(芸能記者)
 だが、その中居が最近、ついに“大人の決断”をしたのだという。
「中居は、最近になってメリー副社長に直接、謝罪したといいます。キムタク以外の独立派の中心は中居でしたから、契約更新を前に、あとは中居が香取、草なぎ、稲垣吾郎(42)の三人をどう説得するかという段階になります。トップ同士の話し合いで九月以降も『スマスマ』は継続する方向で進んでいる。SMAPは今後、少年隊のようになるでしょうね。グループは解散しないが、活動はバラバラ。木村は東山紀之のように事務所の中核になっていくのでしょう」(大手プロ幹部)

飯島氏は9月まで静観の構え

 SMAPは“九月危機”を乗り越えられるのか。ジャニーズ事務所は代理人を通じてこう回答した。
ジャニーズ事務所は、現在に至るまで、SMAPのメンバーが日常を取り戻せるよう、全力でサポートしております。憶測や悪意に満ちた質問にお答えするつもりはございません。メンバーの今後を静かに見守って頂きたいと心よりお願い申し上げます〉
 四月十九日の夜、小誌は今年二月にジャニーズ事務所を退社したあと、海外や国内のホテルを転々として雲隠れを続けていた飯島氏を都内で目撃した。購入したばかりの真新しいアウディから颯爽と降り立つ彼女は、以前より肌艶も良く、幾分ふっくらしたように見えた。飯島氏の知人が語る。
「彼女はジャニーズを去るとき、芸能界の仕事には就かないと話していたそうです。少なくともSMAPが九月の契約更新を乗り越えるまでは大人しく事態を見守るつもりでいます」
 小誌は、飯島氏にSMAPのメンバーやジャニーズ事務所への思いを尋ねた。だが、彼女は一度も立ち止まることはなく、か細い声でこう言うのみだった。
「もう、関係ありませんので……」
 もはやそこにはジャニーズの“影の女帝”と恐れられたオーラはなかった。

週刊文春」2016年5月5日/12日 ゴールデンウィーク特大号

〈小泉純一郎〉激白「川内原発は止めて九州は即時原発ゼロに」

「騙された私がアホやねん」
 熊本地震の三日前、ライフワークとする「原発ゼロ社会の実現」を訴え、宮城県の講演でこう語っていた小泉純一郎元首相(74)地震発生を受けて、『小泉純一郎独白』の著者・常井健一氏に吠えた。

 四月十一日、東北電力女川原発を抱える宮城県に小泉氏の姿があった。盟友の中川秀直官房長官らを同行させ、登米市太陽光発電所を見学後、仙台市内で講演。会場を埋め尽くす聴衆に「原発ゼロでも日本はやっていける」と熱弁する一方、首相時代に原発を推進した過去にも触れ、「専門家にウソをつかれた」と言わんばかりに冒頭のフレーズで笑いに変える。桂銀淑「大阪慕色」の一節を用いたお得意の演出だ。
 この日、小泉氏はレクサスからトヨタ燃料電池車「ミライ」に乗り換えたという“新ネタ”を披露、「過去の人が未来に乗っているんだ!」とおどけて見せた。
 首相退任から今秋で十年。その人気はいまだ健在だ。
「講演の告知を地元紙に出した日、事務局の電話やファックスが鳴りやまず、八百席が予約で埋まってしまいました」(事務局関係者)
 政界引退後は「読書、音楽、ゴルフ。退屈しないね」と語る小泉氏は、三月にはイタリア経済紙のサイトにも登場した。東京文化会館で巨匠リッカルド・ムーティー指揮のオペラ楽曲を堪能した直後、特派員に直撃され、お得意のオペラ論を饒舌に語ったのだ。
「オペラが好きになったのは二十歳ごろ。イタリアから入ったんだ。素晴らしいよ。ヴェルディドニゼッティベッリーニプッチーニはわかりやすい。ワーグナーはね、なかなか難しい。ワーグナーを好きになったのは、四十過ぎ。ある程度、聞きこまないとわかるようにならない」
 後日、そのことを筆者が訊ねると嬉しそうに語った。
ムーティーは四十年間で百五十回も来日しているんだ。一年に四回弱も来ている。あれだけ日本を知る指揮者は他にいないよ」
 最近は、クラシック関連のオファーも受ける。四月三十日には宮崎市で開かれる宮崎国際音楽祭でも演奏者と持論を語る予定だ。
「徳永二男さんという有名なヴァイオリニストと一緒に話すんだ。その日は原発の話はしないよ」(小泉氏)
 一方、今回の熊本地震を受け、小泉氏周辺は川内原発の稼働停止を訴える。小泉氏は筆者にこう強調する。
「熊本の震災は想定外だった。五年前、福島第一原発の事故を引き起こした大地震も想定外だった。万が一のことを考え、川内原発は当然稼働を止め、九州の原発を即時ゼロにすべきだ」
 小泉氏は以前から鹿児島県にある川内原発の再稼働に警鐘を鳴らしていた。原子炉は、父・純也氏の故郷・南さつま市から五十キロの距離にある。小泉氏は昨年六月に鹿児島市を訪れ、講演でこう訴えた。
地震だって最近しょっちゅう起きるし、噴火だってね、想定外の噴火でしょう、御嶽山の噴火にしても、他の噴火にしても。桜島よりも、口永良部島の噴火のほうが大きい。九州には阿蘇もあるし、桜島もある。この十年間で、マグニチュード七前後の地震が五回も起きているんです。そのたびに原発がストップしている。地震国・日本、火山もいつ噴火するのかわからない。日本は、原発をやってはいけない国ですよ」
 安全性を審査する原子力規制委員会の新基準も、冒頭の講演で一刀両断した。
「最近、専門家も『世界一厳しい基準』と言うのを控え、『世界最高水準に近いレベル』と言う。急に否定するのは嫌だから、だんだんそう言い換えている」
 息子・進次郎氏は最近、以前よりも原発関連の発言を控えているが、「各党は原発参院選の争点にすべき」と訴える父は五月下旬、都内で集会を開き、闘いの狼煙(のろし)を上げようとしている。
 元首相の怪気炎はまだまだ収まりそうにない。

週刊文春」2016年5月5日/12日 ゴールデンウィーク特大号

〈告発スクープ〉舛添知事「公用車」で毎週末「温泉地別荘」通い

〈ロンドン・パリ五泊で二十名五千万円也〉舛添要一都知事による豪華すぎる海外出張への批判は収まる気配がない。だが、当の舛添氏はワシントン出張でもスイートルーム泊を敢行。そんな折、舛添氏の血税乱費を徹底取材してきた小誌に“新たな疑惑”がもたらされた。

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説明責任を果たす気はあるのか

 四月二十二日金曜日、午後二時三十分過ぎ。東京都庁第一本庁舎のエントランスホールには、黒塗りのワンボックスカーが横付けにされ、SPや警備員、都庁の幹部職員十名ほどが周囲を睥睨していた。
 そこに姿をみせたのは、定例の記者会見を終えた舛添要一都知事(67)だ。
 舛添氏は足早に車に乗り込むと、職員たちに軽く右手を上げ、後部座席に身を沈めた。
 それから約三時間半後の午後六時――。
 舛添氏が乗り込んだワンボックスカーは、都心から約百キロ離れた神奈川県湯河原町にある「湯河原温泉郷」に現れた。急な勾配の斜面を登り、山の中腹の脇道に入る。高級旅館や大企業の保養所が並ぶエリアを通り抜けると、やがて豪勢な屋敷の門が現れた。
 木製の門がゆっくりと開くと、赤いテールランプを点らせたワンボックスカーは、奥へと吸い込まれていった。鬱蒼とした木々に囲まれ、中の様子は外部からは見えないが、玄関に掲げられた表札には、「舛添」の文字――。
 住宅地図には「MIPE 湯河原別荘 舛添」と記されている。「MIPE」とは舛添氏の妻が代表取締役、本人も役員を務めるファミリー企業「舛添政治経済研究所」の英字略称だ。
 そう、この豪邸は舛添氏の事実上の別荘なのである。
 だが、なぜ舛添氏は、金曜日の午後二時半に温泉地の別荘に、しかも公用車を飛ばして向かう必要があったのだろうか――。
 その謎を解くには、ここに至るまでの舛添氏の直近の動向を確認しておく必要がある。
 まず四月十二日からは、五泊七日の日程でニューヨーク・ワシントンに出張に出かけた。一連の“海外大名出張”への批判が高まる中、今回も一泊あたりの宿泊費は約十五万円、航空チケットは二百二十五万円。批判を受け、出発直前に随行員を四人減らしたものの、スイートルーム&ファーストクラスのセットは頑なに譲ろうとしなかった。
「知事の宿泊費の上限は都市ごとに決められており、今回の二都市の場合、いずれも四万二百円。舛添氏は急な要人との会見の可能性があるためホテル、部屋のランクは下げられないと主張していますが、今回も急な要人との会見は一つもなかった」(都政担当記者)
 鳥取県知事を二期務めた片山善博・元総務大臣も、首を傾げる。
「急な要人との面会があるかもしれないからと説明していますが、海外出張でVIPが突然訪ねて来る場面はありません。外国を訪れる際は、あらかじめ綿密な訪問計画を作ったうえで、こちらが出向くのが基本ルールだからです」
 そして、この出張中に、熊本地震が発生する。舛添氏は十八日に帰国した際、成田空港でこの地震への対応を問われてこう答えた。
「どういう形の会議を開くか、これから検討したい」
 だがその後、都庁へは寄らず自宅へ直帰。翌十九日は登庁さえしていない。
「一方で、二十一日には高級ブランドの展覧会のオープニングセレモニーに出席しました」(前出・都政担当記者)
 そして二十二日。定例の記者会見では、ニューヨーク・ワシントン出張の経費、とりわけ宿泊費に関する質問が集中した。
 それに対して舛添氏は、
「遊びにいっているわけではなく、スイートという言葉だけで『遊び回っている部屋』という誤解があってはいけない」と応じた。
 さらに「熊本地震の情報が刻々と入り、警察や医者の派遣などについて、すごい頻度で(スイートルームで)会議をした」と釈明したが、帰国後の行動を見る限り、地震対応に集中しているとは言い難い。
 読者諸賢は既にお気づきだろう。冒頭の場面で、舛添氏が湯河原の別荘へと公用車を飛ばしたのは、まさにこの“スイートルーム”問答を終えた直後のことだったのである。

情報公開で判明した舛添氏の行動

 血税を湯水のごとく遣う舛添氏の金銭感覚について取材を重ねていた小誌記者のもとに、都庁関係者から匿名を条件に「ある疑惑」がもたらされたのは、四月上旬のことだった。
「就任当初から舛添知事は、週末に東京を離れることが多いのです。幹部職員の間では湯河原の別荘を訪れていると囁かれており、もし本当ならば危機管理の観点から大問題です。さらに問題なのは公用車を使っていることです。公用車の経費は、言うまでもなく血税であり、公私混同の批判は免れないからです」
 にわかには信じがたい話だが、小誌は舛添知事の公用車記録の情報公開を東京都に求めた。
 二週間後、小誌が入手したのは、平成二十七年四月一日から平成二十八年四月十一日にかけて、知事のドライバーが移動経路を克明に記した「庁有車運転日誌」だ。約三百枚に及ぶ書類を繰るうち、ほどなく「ある事実」に気付いた。
 舛添氏は、毎週末、公用車で湯河原の別荘を訪れている――。
 運転日誌から、湯河原へ行った記録をすべて抜き出したのが、下の表だ。

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 たとえば今年四月八日の日誌によると、知事の専用車両は、九時四十分に都庁を出発、十時五分、舛添氏の自宅がある世田谷区を経由し、十時三十分に都庁に到着している。
 これは舛添氏を都庁に送迎したのだろう。
 そして十四時四十分、車両は都庁を出発、世田谷区を経由し、湯河原町に到着している。
 ここで舛添氏は下車しているはずだ。
 その後、空の車は十九時十五分に湯河原町を発ち、二十時三十分に都庁に戻っている。表の備考欄に何も書いていない場合は、ほぼこの《都庁~世田谷区~湯河原~都庁》を辿っている。
 それ以外は、昨年五月三十日のように〈出先から湯河原に直行〉、あるいは、同九月二日のように前日、湯河原に送り届けた舛添氏を〈湯河原に迎えに行く〉というパターンだ。
 集計すると、舛添氏は、この一年余りで四十八回も湯河原を訪れているのである。一年を五十二週とすれば、まさに毎週末といっても過言ではない。ちなみに今年、公用車で湯河原に行かなかったのは元日と三月十八日だけだ。
 そして、四月二十二日、小誌記者は舛添氏の乗った車が、別荘へと吸い込まれていくのを確認、これが四十九回目だったのである。
 登記簿謄本によると、この別荘の敷地面積はなんと九百五十m²、約三百坪だ。所有者は「舛添政治経済研究所」であり、平成十一年に借り入れすることなく購入している。この別荘を訪れたことのある舛添氏の友人が内部の様子を語る。

毎週末、別荘で何をしているのか

「敷地内には、建物が二棟あり、一つは和風の数寄屋造で、もう片方は堂々たる洋館です。あのあたりの別荘はみんなそうですが、温泉も付いています」
 地元不動産業者は、その資産価値をこう見積もった。
「このあたりは風光明媚で、かつては大企業の保養地が立ち並んだ人気エリア。舛添さんの別荘は土地だけで九千万円は下りません。建物を合わせると二億円近くかかっていると思います」
 いったい、舛添氏は別荘で何をしているのか。
 別荘周辺を取材した限りでは、公務に従事している形跡はない。
「十年以上前から、二人のお子さんを連れて年に何回もいらっしゃってました。奥様のご実家がこの近くにあるようで、奥様のご両親もよく来られていました。最近もホームセンターなどで一人で買い物しているのを見かけました」(近隣住民)
 近隣の商店主は、厚生労働大臣を務めていた〇七年ごろから、毎週のように目撃していたという。
「舛添さんは鍼灸院やクリーニング店にも通っていました。クリーニング代を支払う際、どんなに少額でも領収書をきちんともらうケチな人でした。今、海外出張で豪華なホテルに泊まるなんて言われていて、驚いてるんです」
 では舛添氏の「公用車による別荘通い」にいったいどれだけの血税が遣われているのだろうか。
 前述の運転日誌によると、もっとも多い《都庁~世田谷区~湯河原~都庁》という「通常ルート」で、走行距離は二百キロを超え、六時間ほどかかっている。
 都内のハイヤー会社に問い合わせると、「都庁と湯河原町の往復で、約八万円かかります」とのこと。この一年で四十九回来訪しているので、単純計算で、約四百万円ということになる。
 また運転手は平均四時間を超える時間外勤務を課されている。その累計は二百二十四時間に上り、これは二十五日分の勤務時間に匹敵することになる。都庁に勤務する運転手の初任給は十四万二千円だが、少なくともこの金額以上の経費が使われているのは間違いなさそうだ。
 公用車での毎週末の「温泉地別荘」通いについて、舛添氏はどう答えるのか。知事秘書室を通じて寄せられた回答は以下の通りだ。
「知事の職責は都政全般にわたる広範なものであり、時間や場所を問わない。週末にはその週の職務のまとめと翌週の公務のための準備を世田谷や湯河原の事務所で行なっている」
 公用車の使用については、「湯河原にあるのは舛添政治経済研究所の事務所であり、都庁等の公務場所から当該事務所に送っているもので、何ら問題はない」という。
 つまり、公用車を使って湯河原で〈公務〉に従事しているというのである。
 公用車の使用に関して、都の条例などでは明確な規定はないというが、神戸学院大学の上脇博之教授は、こう批判する。
「明文化されなくとも公用車を私的に利用してはならないというのは当然です。公務のためと言いますが、なぜ東京都知事が湯河原で公務をする必要があるのでしょうか。その説明責任を果たす必要があります」
 そもそも舛添政治経済研究所の所有物である別荘で、都知事としての〈公務〉を行なっているにもかかわらず、都によると「東京都からの支払いは一切ない」という。
「しかし他ならぬ舛添氏自身が、参院議員時代の一〇年から四年間、自宅を〈事務所〉として利用したとして、少なくとも二千万円以上の家賃を舛添政治経済研究所に支払っていたと指摘されています。このときは、国民の税金である政党助成金が家賃として還流されていると批判を浴びました」(社会部記者)
 結局のところ、そのときどきで、自分に都合のいいように、公人と私人の立場を使い分けるのが、舛添氏のやり方なのである。
 問題は公私混同だけではない。
 知事経験のある前出の片山氏は、こう批判する。
「私は知事時代、非常事態発生の可能性を考慮して、遠方への外出や、家族旅行自体を控えていました。私の経験上からいっても、違和感があります。リーダーとして公私混同と受け取られることを慎むのは当然です。そうでなければトップの下で働く職員たちに示しがつかない」
 片山氏の指摘する通り、非常事態に際して舛添氏には都知事として、約一千三百万人の都民の命を預かる責任があるはずだ。
 仮にテロや大地震が東京を襲った際、都知事が都心から約百キロ離れた土地にいては、危機管理どころの騒ぎではない。
 防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏は、「とんでもない話だ」と憤る。
「熊本地震を見ればわかる通り、活断層地震はいつ、どこで起きても不思議ではない。さらに首都直下地震は、今後三十年で七割の確率で起きると見られている。災害時に設置される対策本部の本部長となるはずの知事が公務以外で毎週末、東京を離れているとすれば大問題であり、すぐに止めてもらいたいです」
 首都直下地震が起きると、湯河原から帰京することもままならないという。
首都高速は被害や大渋滞などで使用できず、都庁に戻るには本来、人命救助の目的で使うべき東京消防庁のヘリコプターを使うしかない。学者時代の舛添氏とは何度も討論番組でご一緒したことがありますが、防災について非常に熱心に勉強されていました。しかし、こうした言動をみるにつけ、現在は、自身の立場を全く理解されておらず、権力が人を変えてしまったと思わざるを得ません」(同前)
 昨年九月一日、防災の日の訓練で、都知事は神妙な面持ちでこう語っている。
「今から二十年前の阪神大震災では六千四百名もの尊い命が失われました。この都市災害を教訓に我々東京は自分たちで何をすべきか、何ができるのか、再点検していきたいと思っています」
 だが、上の表を見れば分かる通り、この発言の数時間後、舛添氏は公用車で〈出先から湯河原に直行〉しているのである。
 こうした危機管理上の問題について、舛添氏から知事秘書室を通じ寄せられた回答は次の一文のみだった。
「危機管理上万全の体制を講じており、問題ない」
 危機管理に対して、この程度の認識しか持っていない人物が都知事を務めている事実そのものが、東京都民にとっては「非常事態」なのである。

週刊文春」2016年5月5日/12日 ゴールデンウィーク特大号